渉外事件というのは非常に簡単にいうと外国に関係する事件です。
自慢することではないですが、私は全く英語が使えません。ですが、外国人の相談もお断りしていないので、外国人の方の事件をやらせていただくことが多いです。
上に書いた説明でわかるように外国人の方が絡めば外国人事件になるので多種多様な事件があります。
これに関して自分のメモの意味も含めて書いて行きたいと思います。
・国際裁判管轄があるか
日本の裁判所で訴訟等法的手続きができるかということです。
私は横浜弁護士会の所属です。横浜弁護士会は神奈川県の弁護士会です。神奈川県の弁護士会なのになぜ横浜なのかという問題については、ここでは触れません。
横浜弁護士会といっても日本全国で弁護士の仕事ができます。
しかし、外国語が喋れないですし、日本では弁護士登録していなければ、弁護士としての仕事はしてはいけないことになっているように、他の国でも誰でも弁護士の仕事はやっていいということではないので、国際裁判管轄がない事件、つまり日本の裁判所で訴訟ができない事件は私はできません。
これについては、最近の民事訴訟法の改正でどんな事件ができるかが定められました。
ちなみに昔は、条文がなかったので、判例等でどんな時に国際裁判管轄があるか決まっていました。日本で管轄があれば、国際裁判管轄があるという考え方が取られていると言われていました。
被告が外国人だと日本に住んでいれば、管轄があるので、国際裁判管轄があるなどという考え方です。離婚の場合は例外があり、悪意の遺棄が原因であれば、被告が海外にいても訴訟ができるなどの例外がありました。
・準拠法がどうなるか
外国が関係するが関係する国のうちどの国の法律が適用されるかという問題です。
これは「法の適用に関する通則法」などにより定められています。
これも慣れないとよくわからないことがあります。
準拠法について、家庭裁判所で離婚等の調停をする際は書かなくても受け付けてはくれるようです。いくつかの裁判所では記載なしで受け付けてくれました。
しかし、離婚の訴訟をする際には、書いていないと書記官さんに書いてくださいと指摘されてしまいます。
ちなみに横浜家裁の人事訴訟係には渉外事件用の補正書(間違いや抜けているところがあったら、ここを直してくださいと指示されるような書面)があります。それだけ書いてないことや外国事件では指摘することが多いのでしょうね。
色々書いてきましたが、例えば、日本人と外国人が離婚の訴訟をする時、どちらの法律が適用されるでしょうか。これにはいわゆる日本人条項というものがあり、日本法が適用されます。
以下参考に昔の事件の訴状の一部を修正して引用します。
「夫婦の一方が日本に常居所を有する日本人である場合の離婚に関する準拠法は,法の適用に関する通則法(以下「通則法」という。)27条ただし書により,日本法が準拠法となるところ,被告は日本に常居所を有する日本人であるので,本件では日本法が適用される。」
これだけなら、簡単ともいえますが、離婚に伴う問題(親権など)ごとに準拠法が異なる可能性があります。
ちなみに親権者については、子どもの本国法と父か母の本国法が同一であれば、子どもの本国法が適用されます。
本国法とは国籍のある国の法律のことです。
そして本国法については、法の適用に関する通則法の38条に規定があります。
以下参考に訴状の一部の引用です。
「親権者の指定については,子の本国法が父又は母の本国法と同一である場合には,通則法32条により子の本国法が適用される。長男☓は,いずれも日本国籍と某国国籍を有する二重国籍であり,同法38条1項ただし書によって,☓の本国法は日本法となる。そして,☓の本国法と被告の本国法が日本法ということで一致することから,親権者の指定についての準拠法は日本法ということになる。」
親権をとったら、子どもをきちんと育てるためには、養育費が欲しいですよね。これについては、扶養義務の準拠法に関する法律に定めがあります。
扶養義務の準拠法に関する法律
常居所とは、相当長期間居住することが明らかな地を意味します。
法の適用に関する法律等に常居所地法による旨の記載があることがあります。日本に住んで間もない外国人の場合、外国に仕事は留学のために居住している日本人の場合等について、問題となることがあります。
常居所地の認定については、あまり判例もないようです。ものの本によると外国人が数ヶ月でも日本に居住し、今後も日本に居住する意思をもって居住していれば日本に常居所があると認定されると考えて差し支えないようです。
法務省民事局長の通達で常居所について記載のあるものがありますが、これに基づいて、常居所を定めることについては、オーバーステイの外国人については日本に常居所をみとめないことになるなど批判があります。また、形式審査の戸籍と訴訟では性質がことなるという問題点もあります。裁判例では通達の考え方に基づいて常居所が日本にあることを否定した例はないとのことです。
そのため、居住期間や居住の意思等、個別の事情を判断して決めるべきだとされています。