相続法が改正されます。

相続法改正に関する備忘録(平成31年3月29日作成)

1 改正事項

・配偶者居住権

・居住用不動産の遺贈等

・分割前の預貯金債権の仮処分

・分割前の預貯金債権の行使

・一部分割

・遺産分割前に共同相続人がした財産処分

・権利承継の対抗要件

・義務の承継

・自筆証書遺言の要件緩和

・遺言保管制度

・遺贈の担保責任

・執行者権限の明確化等

・遺言の撤回

・遺留分の金銭債権化

・生前贈与と遺留分

・負担付き贈与と遺留分

・不相当対価と遺留分

・遺留分の侵害額の計算方法

・遺留分権利者承継債務

・特別の寄与

 

2 施行日

(1)  自筆証書遺言の方式を緩和する方策  

  2019年1月13日

(2)  相続法関係について原則的な施行期日(債権法改正に関係するもの等は除く)

   2019年7月1日

(3)  配偶者居住権及び配偶者短期居住権の新設等

     2020年4月1日

(4) 自筆証書遺言保管制度新設

 2020年7月10日

 

3 葬儀費用等の確保に役立つ改正 

・分割前の預貯金債権の仮処分(要件が緩和されました)

・分割前の預貯金債権の行使ができるようになりました。

仮払い制度 相続開始時の残高に3分の1を掛けて、その部分に各共同相続人の法定相続割合を乗じる(法務省令の上限150万になる見込みです)。

仮払いをすると、単純承認となる点に注意。相続放棄ができなくなります。

 

なお、仮払いではなくかってに使用された場合、遺産分割前に共同相続人がした財産処分(906条の2)として、その処分された財産が遺産の分割時に遺産として存在するものとみなすことができるようになります。勝手に使用した者以外の同意が必要となります。

 

・遺産の一部分割 これまでも実務上、可能とされていたが、一部分割することに合理的な理由が必要だとされていたが、相続人が遺産分割の範囲を自由に決定できるようになった。

 

4 自筆証書遺言要件緩和

・従前、自筆証書遺言で気をつけること、遺言者自身が全文・日付・氏名を自署し、かつ押印しなければならない。

・改正点

自筆証書遺言に財産目録を添付する場合、その目録は、自署することを要しない。パソコンや通帳のコピーを使えるようになりました。

注意点 全てのページに署名押印が必要。

加除訂正方法については、修正なしがなされていません。

そのため、財産目録についても、訂正箇所の指摘と署名押印が必要。単なる差し替えをすると無効となる可能性があります。

なお、秘密証書遺言は準用なしのため、従前とおり

 

5 法務局における自筆証書遺言保管制度

法務省令で定める様式に従って作成した無封のもので本人の出頭による本人確認が必要となります。

検認が不要となります。

また、被相続人の死亡後、遺言を探すことが可能となります。

いつでも撤回できますが、法務局に本人が行く必要があるなど、利便性があるのか疑問があります。

 

6 遺留分について

・遺留分侵害額請求権となり、金銭債権化しました。

これまで、遺留分減殺請求権が行使されると共有状態になるなどの問題が発生していました。株式や事業用の財産について、事情承継の問題が発生するなどの問題があったため、改正されて、金銭で請求するのみになりました。

・遺留分の算定の基礎に参入する贈与は原則として相続開始前の1年

・特別受益となる贈与(財産上の給付の額が相当の額にのぼること、すなわち相続分の前渡しと評価できる程度のもの)は相続開始前の10年にしたものに限られるように変わりました。

法定相続分から控除される特別受益となる贈与について期間制限の定められていない点については変わりない。贈与双方が遺留分権利者の侵害発生について悪意の場合、10年よりもさかのぼって遺留分算定基礎額への算入が可能という点には変更ありません。

・遺留分の行使期間は、1年の消滅時効と10年の除斥期間は変更ないが、遺留分侵害額請求権行使後の金銭債権は時効にかかると思われます。時効期間は、債権法改正でも修正があるため、要注意です。

これまで遺留分減殺請求権を行使すれば、形成権であり、物件的効果がある、要するに所有権を取得し、準共有になるなどの効果が発生していました。

そして所有権は消滅時効にかからないため、遺留分減殺請求権を行使して、その後は、ゆっくり時間がかかってしまっても問題ありませんでしたが、そのようなことはできなくなりました。

 

7 いわゆる相続させる旨の遺言について、特定財産承継遺言(1014条1号)

対抗要件具備899条の2。これまで特定財産承継遺言で財産の承継が行われる場合、財産取得者である相続人は、登記や登録無くして、第三者に対抗できるとされていましたが、修正がされることになりました。

法定相続分を超える分については、第三者に対抗するには、登記が必要となります。

 

8 不動産贈与持ち戻し免除の意思表示推定

贈与時点または、遺贈を内容とする遺言の時点で20年に達している必要がある。

結婚から20年経過していなければ、改正903条4項適用無く、これまでとおりの、同法3項の黙示的な意思表示の問題となります。

 

9 特別寄与料(1050条)

介護等をした被相続人の親族に金銭請求ができる可能性がでました。

なお、被相続人の親族には相続放棄をしたもの、欠格廃除で相続権を失った者は含まず。

期間が短いので注意が必要です。相続開始から1年以内で相続開始相続人を知ったときから6月。

 

10 居住権創設

配偶者の住居の確保のために無償ですむことができるようになります。

短期居住権 財産的評価なし。無償の場合のみ、共有していたり、賃料払ってると不可。

欠格・廃除のときももらえない。

長期居住権(金銭評価方法が定まっていませんので、問題がでてきそうです。)